僕の話を聞いてくれ





世界から他人が消えた。

ここにいるのは僕だけだ。

硬いベッド、薄いシーツ、何もない真っ白な壁と天井。

無機質な蛍光灯。花瓶とナースコール。呼んでも誰も来やしない。

ここにいるのは僕だけだ。

そう、僕だけ。


「具合のほうはどうですか?」


幻聴が聞こえる。

優しそうな女の声だ。まるで看護婦のように振舞う。うっとおしい。

いつもだ。毎日毎日こんな幻聴ばっかり。

目を見開いてもそこには何もいない。

ただ壁があるだけだ。優しい看護婦などいない。


「私の姿が見えますか?もしもし?」


僕は長い間点滴をうたれている。

もうどれくらいになるかわからない。

誰が続けているのかも。

たまに腕に注射のような痛みを覚えたりするほかは何もない、

退屈な生活だ。



幻聴が消えた。さっきまで近くにあった気配も一緒に。

いつもそうだ。何もないはずの空間に気配だけがある。

そしてそこから声が聞こえる。「具合のほうはどうですか?」

僕は目は見えている。耳も聞こえる。

しゃべらないのはしゃべりたくないから。

動けないのは点滴をうたれているからだ。

点滴をうたれているのは病気になってるからで、

病気になったのは、僕のせいじゃない。

目が見える僕が姿を確認できず、声だけが届く。

ということは幻聴だ。幻聴。

いまだってこんなにはっきり病室が目に映る。

少しザラザラした壁の感触だって、

手に取るようにわかる。

・・・また幻聴が聞こえてきた。少し遠くからだ。


「あの患者さん、どう?」


「やっぱりだめです。私たちの姿だけ見えないみたいで・・・。」


「こうなる前はさぞかし人間嫌いだったのね。」


「薬の副作用・・・こんなことあるんですか?」


「さあ・・・。仕方のないことよ。」





世界から他人が消えた。ここにいるのは僕だけだ。

看護婦など、見えもしない。




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