母さん、父さん。いままでありがとう。
がさつだったけど優しかったね。2人とも。
こんな事になってしまってすいません。
ロクデナシな息子を許してください。
死体を焼いた灰は海に流してください。
たのしい事をいっぱいありがとう。さようなら。
『いいヤツだったな。』
「ああ。」
『なんであいつが死ななきゃならなかったんだろう・・・。』
「・・・ 仕方ないよ。」
『・・・ 正直今でも信じられないよ。』
「俺もだよ。まさかこんな事になるなんて。」
『そういえばあいつの彼女は?』
「来てない。潰れたあいつなんか見たくないって。」
『そうか。』
「・・・ ビルの屋上からだっけ?」
『ああ。一瞬だったらしいよ。』
「・・・ 可哀想に。」
『ああ。』
「・・・ ・・・この服、あいつ一番気に入ってたよな。」
『ああ。』
「すげー着まわしてたもんな。週に3回、とか。」
『よく見るよ。遊ぶ時はいつもこれだった。』
「最期にこれ着れて幸せだったかなぁ。」
『・・・ ・・・どうだろうな。』
「あ。ご焼香俺の番だ。」
『おう。』
「・・・ まだ若かったのにな。」
『やりたい事だってあっただろうに。』
「バンドやってたっけ?」
『ああ。プロは目指してないって聞いたけど。』
「あいつ歌うまかったもんなぁ。」
『地元じゃ結構人気あったみたいだしな。』
「そうなのか。」
『ああ。』
「おい、ご焼香次お前だよ。」
『ああ。行ってくる。』
「ついにあいつも燃えちまうんだな。」
『ああ。彼女も骨ぐらい拾ってやればイイのに。』
「いや。俺が彼女だったら来てないかもしれない。」
『・・・ ・・・かもな。』
「他に葬式来てないヤツ誰がいる?」
『仲良かったヤツとかだいたい来てるしな。母親ぐらいだろ。』
「バカ。母親が来れるワケねーだろ。」
『今頃刑務所か。死刑判決出たんだっけ?』
「そんなにすぐ出るかよ。何年もかかるんじゃないか?」
『クソ。今すぐ死刑にすりゃあイイのに。』
「俺たちで殺してやりたい気分だよ。畜生。」
『なんで自分の息子を・・・ ・・・。』
「保険金目当てだろ?借金あったらしいし。」
『最初遺書があった、って事で自殺扱いだったよな。』
「ああ。捜査も打ち切りになりかけてたとか。」
『お前があのメッセージに気づいたおかげだよ。』
「あいつああゆう凝った事好きだったしな。」
『まさか遺書の文頭を縦に読むとはな。よく考えてあるよ。』
母さん、父さん。いままでありがとう。
がさつだったけど優しかったね。2人とも。
こんな事になってしまってすいません。
ロクデナシな息子を許してください。
死体を焼いた灰は海に流してください。
たのしい事をいっぱいありがとう。さようなら。
「でもさ。」
『なんだよ。』
「この遺書いつ書いたのかな。」
『・・・ さあな。』
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