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11月4日 純の日記



今日はキリンジを買い物に連れて行った。

その行き帰りで色々と話をした。



『昨日さ』

「ん?」

『1日経ったら何もかも忘れる、とか言ってたじゃん。』

「ああ。ほんとだよ。」

『それじゃ今までどうやって生きてきたの?』

「俺もわからない。」

『・・・ああ、そっか。』

「・・・たぶんこうやって誰かに拾われてたんじゃないかなぁ。」

『じゃあなんで公園に?』

「・・・なんでだろ。やっぱり覚えてないけど。」

『そっか。』

「でも。思い出したくない。なんとなくだけど。」

『・・・ごめん。』

「いやいいよ。俺自身理由もよくわかってないのに。」

『・・・ ・・・でもやっぱりひとりで公園にいたって事はさ』

「捨てられたのかな。」

『・・・わかんないけど。』

「でももしかしたら俺から出て行ったのかもよ。

 何か理由があって。」

『例えば?』

「・・・そのひと殺しちゃったとか。」

『怖いなぁ。』

「・・・ ・・・時々不安になるんだ。」



不思議な会話だった。

キリンジが少し怖いと思った。

深い井戸に石を落としたような。吸い込まれるような感じがした。

何もわからないのは不安だ。

それでもやっぱり悪いやつじゃないと思う。

今日は5時からバイトだったからキリンジに留守番を頼んだ。

何も盗んではなかったし、何も壊してなかった。

逃げるかなって少し心配したけど

よく考えたらここ以外に住むところないんだ。

そう思うと少し彼が小さく見えた。















11月4日 彼の日記



今日の会話も『ド忘れ』についてだった。

少し自分の奥が見えた気がする。

少しでも不安をひとに打ち明けるっていうのはこんな気分なんだ。

なんか不思議な感じ。

今日はなんか純がバイトだったみたいだ。

留守番を頼まれた。

部屋に入ってくつろぐ程度なら構わないって言われた。

せっかくだから色々と純の部屋を見てまわった。

CDを聴いたりもした。

コンポの操作方法なんかは覚えてる。不思議だ。

それでCD聴きながらマンガでも読もうと思って、

本棚のほうに目を向けたら、見つけてしまった。

日記。

あいつも日記つけてるんだ。

読みたかったけどやっぱり読んじゃいけないような気がして。

マンガだけ読んでちゃんと片付けて、

CDも止めて元の場所に戻して、

台所に帰った。

他人の日記なんか読むもんじゃないよ。読まない。

おやすみ。






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